マイルスをインスパイアしたピアニストたち1960年代後半〜 (Monthly Playlist 2026.3)

渾身のプレイリスト 2026.3

今月のテーマは、60年代後半のマイルス・デイヴィスを支え、彼をインスパイアしたピアニストのご紹介です。キース・ジャレット、ハービー・ハンコック、ジョー・ザヴィヌル、チック・コリアの4人を取り上げます。

この時期に、これほどまでに創造性あふれる優秀なピアニストが次々と登場したこと自体、非常に興味深い出来事です。その背景には、マイルスの存在と彼の慧眼によるところが大きいでしょう。しかしそれ以上に、この4人のあふれんばかりの傑出した才能が当初からすでに完成されていたことが、当時の映像からも確認でき、深い感慨を覚えます。

今回はあえてマイルスとの共演映像ではなく、それ以外の60年代後半から70年代初頭にかけての映像を振り返ります。のちに大成していく彼らの秘めたる可能性や、その原点の一端をご紹介できればと思います。

1 Keith Jarrett
2 Herbie Hancock
3 Joe Zawinul
4 Chick Corea

1 キース・ジャレット
チャールス・ロイド・カルテットでの1966年のライブ映像ですが、キースのピアニズムはすでにこの時点で完成されています。ロイドを差し置いて、グループの主役となっているほどです。深い曲の解釈力や、予想を超えてくる卓越したフィンガリングなど、ただただ驚くばかりです。

2 ハービー・ハンコック
すでに60年代前半からマイルスと共に新たな地平を切り拓いていた彼が、自身の代表作でもある「Toys」を自身のグループ『Mwandishi(エムワンディシ)』で再構成した、1972年の貴重な映像です。ファンク路線へと突っ走る以前のこの頃のハービーは、名盤『スピーク・ライク・ア・チャイルド』の発展形を模索している時期。思索的で非常にジャジーなアプローチに、思わず聴き惚れてしまいます。

3 ジョー・ザヴィヌル
彼のキャリアはもっと古くからありますが、やはりキャノンボール・アダレイのグループでその才能が開花したと言えるでしょう。個人的にも大、大好きなザヴィヌル独特のノリがすでにプンプンと匂い立っており、思わず嬉しくなってしまいます。当初は他の3人に比べるとインパクトが弱いかもしれませんが、のちに彼が放つビジョンや展開は、私見ながら他の3人を凌駕していると感じます。「ザヴィヌルこそが真のマイルスの後継者である」とさえ思うのです。

4 チック・コリア
1960年代のチック・コリアの映像は、マイルスと共演しているもの以外ほとんど残っていません。本当は『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブズ』の頃や、グループ「サークル」の映像があればよかったのですが、音源しか存在しないようです。チックといえば、あの『ナウ・ヒー〜』のピアノトリオの出来があまりにも斬新で秀逸なため、今回ご紹介する映像自体にそこまでの希少性はないかもしれません。しかし、スタン・ゲッツ・グループでの彼の若々しいローズ・プレイは大きな見どころです。 

厳選! YouTube  静寂を紡ぐ ヤコブ・ブロ

毎月、心震えた動画を厳選して一つだけお届けするこの企画。

今月は、現代ECMを代表するギタリスト、ヤコブ・ブロを取り上げます。彼ならではの牧歌的かつ求道的なギターの音色に魅了されている方も多いことでしょう。

この映像は、ヤコブ・ブロをはじめ、Joe Lovano (ts)、Larry Grenadier (b)、Anders Christensen (bass-g)、Joey Baron、Jorge Rossy (ds) という錚々たるメンバーが、故ポール・モチアンの精神を讃えるために集結した奇跡的なプロジェクトです。

どこまでも静かなアンサンブルは、聴く者に時が経つのを忘れさせます。とりわけロヴァーノのサックスの音像がこの空間に見事に調和しており、至福の心地よさをもたらしてくれます。ダブルベース、ダブルドラムという特異な編成が織りなす、立体的で奥深いサウンドも必聴です。

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