Monthly Playlist 2026.6

「Never Will I Marry」名唱聴き比べ

ナンシー・ウィルソンの天性のスイング感と、個性あふれるボーカリストたちの饗宴

「Never Will I Marry(私は絶対に結婚しない)」——そんな孤独で固い決意を歌ったこの曲に、私が長年惹きつけられてやまない理由。それは何より、1961年の名盤におけるナンシー・ウィルソンの、天性のスイング感溢れる圧倒的な歌いぶりに他なりません。

若きジョー・ザヴィヌルによるリズムセクションとキャノンボールのアルトをバックに、彼女自身が「気楽な3管目のホーンになったような気分だった」と語る通りに躍動し、本来重いテーマを持つこの劇中歌を、極上のジャズ・スタンダードへと昇華させました。彼女が生涯のアンセムとして愛し続けたこの名唱を筆頭に、今回は世代やジャンルを超えた個性豊かなボーカリストたちによる聴き比べをお届けします。ジュディ・ガーランドの圧倒的なショーから現代の解釈まで、それぞれの歌い手が魅せる全く異なる景色をお楽しみください。

1. ナンシー・ウィルソン&キャノンボール・アダレイ / Never Will I Marry / Nancy Wilson/Cannonball Adderley / 1961年

この曲のジャズ・スタンダードとしての「絶対的基準」となる名唱。ナンシーの天性のスイング感と、まるで管楽器の一部になったかのような強靭なアタックと躍動感は、何度聴いても圧倒されます。

2. ジュディ・ガーランド / Never Will I Marry / The Judy Garland Show (Live) / 1963年頃

まさに「ショー」と呼ぶにふさわしい、鬼気迫る強烈なパフォーマンス。スイングというよりは、歌詞に込められた感情を剥き出しにした圧倒的なエンターテイメント性に釘付けになります。

3. バーブラ・ストライサンド / Never Will I Marry / The Third Album / 1964年

原曲である「ブロードウェイ」の出自を強く感じさせるテイク。オーケストラをバックに、シアトリカル(演劇的)でドラマチックな解釈を豊かな声量で歌い上げています。

4. アンドレア・モティス / Never Will I Marry / Emotional Dance / 2017年

スペインのトランペッター兼シンガーによる現代の快作。ナンシーの躍動的な歌いぶりに最も近いアプローチを感じさせつつも、彼女自身のフレッシュで軽やかな魅力が見事に重なっています。

5. セシル・マクローリン・サルヴァント / Never Will I Marry / (YouTube等公開ライブ音源) / 近年

現代ジャズ・ボーカルの最高峰による必聴の解釈。底知れぬ表現力と知的なアプローチで、この曲が持つ「孤独と意志の強さ」を極めて現代的かつ演劇的に再構築しています。

6. リンダ・ロンシュタット / Never Will I Marry / Hummin’ to Myself / 2004年

ロックやカントリー界の歌姫がジャズに真正面から挑んだアルバムより。持ち前のストレートで芯の強いボーカルが、この曲の力強いメッセージと見事にマッチしています。

7. アンソニー・パーキンス / Never Will I Marry / Greenwillow (Original Broadway Cast Recording) / 1960年

すべてはここから始まりました。映画『サイコ』で知られるアンソニー・パーキンスが初演で歌った「原曲」です。ジャズ版とは全く異なる牧歌的なワルツのアプローチは、聴き比べの終着点として新鮮な驚きを与えてくれます。

厳選!YouTube
追悼・北川潔

北川潔トリオ(北川潔 / 片倉真由子 / 石若駿) “2017年 新宿ピットイン ライブ映像”

北川潔の死はあまりにも突然だった。小曽根真トリオで彼のプレイを生で聴いた時、北川のベースに圧倒されっぱなしであった。

2017年の新宿ピットインでのライブで、ピアノに片倉真由子、ドラムに石若駿を迎えて記録されたこの映像は、日本ジャズ史において後世に遺しておきたい素晴らしいアーカイブである。片倉がドラムの石若に投げる挑戦的であり、かついかにも楽しそうな視線がたまらない。これも北川潔のずば抜けたグルーヴ感と強力な推進力に触発されている証である。

このグループ全体にみなぎる緊張感と疾走感に酔いしれて欲しい。

コメントを残す