肉声という名のアンサンブル。ケニー・ウィーラーの遺志が拓く、現代ジャズの新たな地平

Dave Holland  デイブ・ホランド Vital Spark (Music Of Kenny Wheeler) 

また、一つどうしてもコレクションしておきたい
アルバムが誕生した

デイヴ・ホランドの今なお衰えない
創作の姿勢、意欲には頭が下がる
多彩な活動を繰り広げるノーマ・ウィンストンを迎え
ロンドン・ヴォーカル・プロジェクトと共に
故ケニー・ウィーラーの深遠な作品群を
見事に現出させた意欲作である

何より、ボーカルというより合唱(クワイア)と
ジャズ・インストゥルメントとの相互作用
相性の素晴らしさに
冒頭からやられてしまう

ケニー・ウィーラーの楽曲の力もさることながら
現代的な抒情性を獲得しているところが
とても新鮮であり、驚きである

カマシ・ワシントンの作品「Fearless Movement」や
エスペランサ・スポルディングの近作
ジェイコブ・コリアーの諸作品における
クワイアの積極的な採用や
小曽根真TRiNFiNiTYの新譜『For Someone』においても
アナ・マリア・ヨペックのボーカルを
アンサンブルの一部として巧みに取り入れた例など
最近、ボーカル(声)をソロパートとしてではなく
アンサンブル的なアプローチに近い感覚で導入し
新たなサウンドメイクに成功している
ケースをよく見るにつけ
まさにジャズという音楽の
フレキシブルな可能性というべきものを
再び強く感じている

このアルバム全体のトーンは、一言で言えば
「優しさに溢れている」のである
ずーっと浸っていたい、揺蕩うような気分

ホランドの淡々と安定感のあるベースにのって
マーク・ロックハートのウォームなサックスの音色
そして合唱パートによる色彩的な感覚の醸成
などなど、それぞれの役割が過度に主張することなく
絶妙なバランスで融合している

ケニー・ウィーラーの遺した構想に対し
デイヴ・ホランドやノーマ・ウィンストンを中心とした
このプロジェクトが、いかに細心の注意を払い
深い楽曲解釈と敬意を持って
アンサンブルの構築に取り組んだかが
窺い知れる出来映えである

新しいサウンドのあり様を目指しているが
確かに「ジャズ」であるところが
本当に素晴らしい

1. Inner Traces
2. Will You Walk A Little Faster
3. Not Waving But Drowning
4. Jazzonia
5. Fuite D’Enfance
6. Vital Spark
7. Infant Joy
8. Heavenly City
9. These are The Things We Trust

Norma Winstone (voice)
Dave Holland (bass)
Nikki Iles (piano)
James Maddren (drums)
Mark Lockheart (tenor & soprano saxophone)
John Parricelli (guitar)
London Vocal Project(Director: Pete Churchill)

 


www.youtube.com

 

 

 

 

 

コメントを残す