愛しのデクスター・コードン (Monthly Playlist 2026.4)
渾身のプレイリスト 2026.4
今月のテーマは、「愛しのデクスター・ゴードン」。個人的に大好きなアーティストです。
「軽妙洒脱」という言葉は、まさに彼のためにあるのではないでしょうか。6フィート6インチ(約198cm)の長身から放たれる匂い立つようなテナーサウンドは、聴く者を一瞬で包み込んでしまう魔力を持っています。ステージ上での立ち振る舞いやその声も、いかにもジャジーでクール。誰もが魅了されてしまう圧倒的な存在感です。そんな彼のパフォーマンス映像を、今の時代にYouTubeで手軽に楽しめるのは本当にありがたいことですね。今回は、デクスターらしい雰囲気が溢れる素晴らしい映像の一端をご紹介します。
1. 映画『ラウンド・ミッドナイト』(1986年)より
- 紹介動画の曲: 「Chan’s song」「Body And Soul」
- 主な共演メンバー: 「Chan’s song」では、シダー・ウォルトン(p)やフレディー・ハバード(tp)、「Body And Soul」では、ハービー・ハンコック(p)、ジョン・マクラフリン(g)、ビリー・ヒギンス(ds)など錚々たるメンバーが脇を固めます。
- 見どころ: 何と言っても、アカデミー主演男優賞にノミネートされたデクスター自身の「存在感そのもの」が最大の見どころです。主人公の老ジャズマン(デイル・ターナー)として吹くテナーサウンドには、全盛期の豪快さとはまた違う、人生の酸いも甘いも噛み分けたような「枯れた深い味わい」と哀愁が漂っています。1950年代のパリのジャズクラブを再現した、タバコの煙が似合う映像美も必見です。
2. 1964年 オランダでのライブ映像より
- 紹介動画の曲: 「Night in Tunisia」「What’s New」「Blues Walk」
- 主な共演メンバー: ジョルジュ・グルンツ(p)、ギィ・ペデルセン(b)、ダニエル・ユメール(ds)
- 見どころ(MCの面白さ): ヨーロッパに渡り、心身ともに充実していた絶頂期のライブです。太く豪快な「ビッグ・トーン」と圧倒的なスイング感が楽しめます。 そして注目の「MC(語り)」ですが、デクスターは 「演奏前にその曲の歌詞を朗読する」という独特のパフォーマンス・スタイルがありました。バラードの「What’s New」の演奏前(動画の冒頭)では、マイクに向かって極端にゆっくりとした低音の渋い声で、「久しぶり。元気だったかい?…君は少しも変わっていないね…」と、まるで芝居のセリフのようにドラマティックに語りかけています。この、ユーモアと気品が混ざり合った「いかにもジャジー」な間合いや立ち振る舞いこそが、彼の愛すべきキャラクターを端的に表しています。
厳選! YouTube 注目のストーリーテラー イマニュエル・ウィルキンス
毎月、心震えた動画を厳選して一つだけお届けするこの企画。
今注目のイマニュエル・ウィルキンス(Immanuel Wilkins)。以前から、何を伝えようとしているのか気になって仕方がない映像「MATTE GLAZE」がこれ。意を決して、表題曲の意味するところや、曲が収録されているアルバム「Blues Blood」のことなど、少し調べてみました。
「MATTE GLAZE」のメッセージと歌詞の意味
- 安らぎと庇護への渇望:映像や歌詞の中で歌われる「Lawd build me a home dwelling, I will not refuse(主よ、私のための家を建ててください、私は拒みません)」といったフレーズは、他者の視線から逃れ、心から安らげる場所(サンクチュアリ)を求める切実な願いを表現しているようです。
アルバム『Blues Blood』のコンセプト
- 先祖の記憶と血脈(Bloodlines): 世代を超えて受け継がれる先祖の記憶や遺産、そして現代を生きる人々と過去を繋ぐ「血脈」がメインテーマです。未来の人々が自らのルーツを探求するための「タイムカプセル」としての意味合いも込められています。
- 歴史的トラウマの治癒とブルース: アルバム名は、1964年に警察から不当な暴行を受けた黒人少年(ハーレム・シックス)のダニエル・ハムの言葉(流血がなかったため、痛みを証明するためにあざ「Bruise/Blues」を開いて血を見せなければならなかったというエピソード)に由来しています。音楽を歴史的な痛みやトラウマを癒やすための手段として位置づけています。
デビュー作『Omega』から一貫して、アメリカにおける黒人の歴史、痛み、精神性を音楽を通じて発信しているアーティストとして高く評価されているイマニュエル・ウィルキンス。一度ライブで聴いてみたいと思うアーティストの一人です。
