伝統と現代の境界を溶かす、魔性を帯びた新世代の声
Gabrielle Cavassa ガブリエル・カヴァッサ Diavola

全く予備知識なく、サブスクの新作レビューでこのアルバムを知った。
「ピュアな拙さ」と「百戦錬磨の玄人の味」を同時に併せ持つような声質だと思った。 おまけに、私の大好きなジェフ・パーカーが参加しているではないか! 「なんじゃこれー」である。 久々に、聴き入ってしまった。4曲目の「ボシー・ノヴァ」の素晴らしいことと言ったら!
ピュアな拙さと玄人の味が交差する場所
偉大な先人たちから受け継いだ「物語」を伝える力
Zawinul Koji: 彼女が影響を受けたルーツとして、私が最も信奉するサラ・ヴォーンやナンシー・ウィルソンを挙げているのには驚きました。多くのボーカリストがエラ・フィッツジェラルドを筆頭に挙げる中で、この二人に言及するあたり、彼女が音楽を深く探求している証拠ですね。サラのあの深い表現をしっかりと受け止めているのだと思います。
三昧博士: まさにその通りだね。彼女自身も「サラ・ヴォーンやナンシー・ウィルソンが築き上げたジャズの伝統を深く愛し、リスペクトしている。でも同時に、エイミー・ワインハウスやフランク・オーシャンのような音楽を聴いて育った世代でもあり、それらの間に境界線はない」と語っているんだ。
Z: エイミー・ワインハウスもルーツにあるのですね!やはり、ただ綺麗に歌うのではなく、何か胸に迫る「物語性」を表現できるものを生まれ持っているのでしょう。
三: うむ。「ジャズの偉大なヴォーカリストたちから学んだ最大のことは、いかに自分に正直に物語を伝えるかということ。歌うことは、自分の最も脆い部分をさらけ出すことだ」と彼女は語っている。その精神が、彼女の親密でスモーキーな響きを生み出しているのだよ。
ジェフ・パーカーとの共鳴と「沈黙」の美学
Z: 今回私が一番ノックアウトされたオリジナル曲「ボシー・ノヴァ」では、私の大好きなジェフ・パーカーが参加しています。彼のプレイと彼女の声が、見事な化学反応を起こしていました。
三: 共同プロデューサーであるジョシュア・レッドマンとドン・ウォズの采配も見事だが、何より彼女の現代的な感性とジェフの個性が合致した結果だね。彼女は「声のひび割れ、かすれ、息づかい、そして『沈黙』……そういった完璧ではない部分にこそ、人間の真実が宿る」という確固たる哲学を持っているんだ。
Z: なるほど。だからこそ、極めて理知的でありながら、隠しきれないブルージーさやファンキーさが滲み出ているのですね。ピアニストの視点から見ても、これほど「軽やかさと確かさ」を併せ持つ表現は稀有です。まさに、ジャズの新たな地平を切り拓く挑戦的なアルバムだと言えますね。
おわりに
サラ・ヴォーンの深みとエイミー・ワインハウスの魂を受け継ぎながら、現代の空気を見事に呼吸するガブリエル・カヴァッサ。彼女の歌声は、私たちが忘れかけていた「人間の脆さと真実」を耳元でそっと囁いてくれる。ジェフ・パーカーをはじめとする極上のバンドアンサンブルと共に、この魔性(ディアヴォラ)の魅力にぜひどっぷりと浸ってみてほしい。
アルバム情報
- リリース年: 2026年
- レーベル: Blue Note Records
- パーソネル:
- Gabrielle Cavassa (Vocals, Rhythm Guitar)
- Joshua Redman (Tenor Saxophone)
- Jeff Parker (Guitar)
- Paul Cornish (Piano)
- Larry Grenadier (Bass)
- Brian Blade (Drums)
- 収録曲:
- Heaven Sighs
- Raindrops Keep Falling On My Head
- Prisoner of Love
- Bossy Nova
- To Say Goodbye
- Angelo
- Be My Love
- Diavola
- Could It Be Magic
- La notte dell’addio
